29日からTOHOシネマズ上大岡などで上映。
モーリタニアと聞いて、どこにあるのか調べてしまった。正式名称はモーリタニア・イスラム共和国で、アフリカ北西部に位置する。イスラム教を国教とし、国民はアラビア語、フランス語を話すという。
そのモーリタニアで暮らしていた青年モハメドゥ・スラヒが2001年11月、地元の警察に連行され、そのままキューバのグアンタナモ米軍基地内の収容所で14年間も拘束され続けた。世界中を揺るがした9・11米同時多発テロの首謀者の一人とみなされる、という何の証拠もない疑惑だけで。
スラヒがつづった体験談は、米政府による検閲で黒塗りだらけのまま各国で出版され、不当な拘束が注目を集めた。本作は、そのスラヒの手記を読んだベネディクト・カンバーバッチが、映画化を切望した作品だ。
人権派の弁護士ナンシー・ホランダーをジョディ・フォスター=写真右、米大統領からスラヒを死刑にするため起訴を命じられるスチュアート・カウチ中佐をカンバーバッチ、と名優が顔を合わせた。スラヒには国際派俳優として活躍するタハール・ラヒム=同左。過酷な拷問によって自白を強いられる場面は真に迫り、胸が痛む。
テロへの「正義の鉄つい」を望む米政府は、違法な拷問による自白だと知って抗議するカウチ中佐を「裏切り者」と呼ぶ。誰でもいいから報復を、という集団心理が怖い。
監督/ケビン・マクドナルド
製作/英国、2時間9分