団体客で満員の久慈駅発、田野畑駅行きの三陸鉄道北リアス線3両編成はトコトコ走るのだ。ヘルメット姿の、いかにも「現場ですっ」という男性職員氏が、「ここが『あまちゃん』の主題歌が流れる最初の所で写っている橋ですよー」などと説明してくれる。「あー」と嘆声を発する中高年ご婦人たち。「あんた、よく聞こえないから、こっちでしゃべってよ」なんて声も。怖い。
東京に向かう主人公・天野アキを祖母・夏が大漁旗を振って見送った、景色のいい海岸では最徐行のサービスもあった。なお、お上のお達しにより、完全な停車は不可なのだそうだ。
だが、やはり話題は3・11に触れざるを得ないのである。無線が使えなくなり、運転士の判断に任せざるを得なくなったが、幸い津波に線路が流された個所の手前で電車が停止したため、人的被害は免れたという。強じんな線路が、継ぎ目ではなく途中からぽっきりと折れて流されたという話だ。
アキの住まいである袖が浜の最寄り駅として登場する堀内(ほりない)駅に停車した。見晴らしがすばらしい。その後、異変は起きたのだった。津波被害で先が途絶している田野畑駅を前にした普代駅に停車した際、団体の皆様がどどどーっと降車なされたのである。同駅前で待機しているバスに乗り、次の見学地に向かうらしい。
ぽっつーん…。残されたのは、恐るべきことに車両にわれ1人でありました。ここから「みちのくおひとり旅」が始まったのであります。じぇじぇ。(N)