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鉄道コラム 前照灯(56)
細かい、楽しい、優しい…車内放送に乗る人の声

話題 | 神奈川新聞 | 2010年11月13日(土) 00:00

 まだしゃべっている。横浜から東海道線の下りに乗ると、時折ばかに丁寧な車内放送に出くわす。窓外に並走していた相鉄は右にそれ、横須賀線の保土ケ谷も過ぎた。それでも終わらない。列車は左へ緩いカーブを切り、武蔵・相模の峠にさしかかろうとしている。

 携帯電話を車内でかけるな、たばこは吸うな…といういつもの注意に始まり、トイレの場所、グリーン料金、そして到着時刻と事細かい。うるさくもあるが、実は嫌いではない。

 例えば、長距離列車に始発駅から乗るときの車内放送は楽しい。車輪がガチャガチャ音を立てて広い構内を出外れるころ、天井からオルゴールが流れ、ベテランとおぼしき年配の車掌が淡々と停車駅を読み上げていく。

 「新津…あつみ温泉…象潟…大鰐温泉…」。耳慣れない地名の羅列に、想像力は列車の速度を飛び越して、はや旅の空をさまよい出す。最近は吹き込みの自動放送が増えたが、やっぱりこういうときは肉声がいい。

 こんなこともあった。深夜に仕事を終え、へたり込むように乗り込んだ根岸線。終点に着く間際、車掌が一言添えた。「今日も一日、お疲れさまでした。この先も、どうぞお気を付けてお帰りください」。ハッとして、思わず口元がゆるむ。鉄道が優しさを届けることもある。(さ)

 
 

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